ぎりぎりでトイレ写真をブログにアップして、駅へと猛ダッシュした。
切符も買わずに改札をかけぬけ、列車に飛び乗ったが、どうも腕の筋肉が痛い。よくよく考えたら、重い便器を玄関やこたつなどいろんなところに運びまくっていたからである。あんなくだらない写真を撮るために筋肉痛になるオレは47歳……本物のバカだな。
早稲田には11時半ころ着いた。
肖像画を注文してくれた広島のキミコさんはもう文カフェ(文学部カフェテリア)で待っていた。ふつーに生徒たちにとけ込んでいるので気づかなかったよ。
キミコさんはベルギーに住んでいたこともあり、なかなかユニークな発想をする。神戸震災被災者にお雛様のカードを送るプロジェクトを立ち上げたり、「選挙にいこう!」というホームページをつくったり、今度は広島で平和音楽祭をやろうと計画している。
肖像画用の写真は、いい感じの笑顔がいっぱい撮れた。ついでに早稲田ネアリカ組といっしょに講演会のビラ配りを手伝ってもらう。「楽しい、楽しい」とはしゃぎながらビラ配りするところがすばらしいね。
それにしてもネアリカ組のやることはおもしろい。おもしろすぎてお馬鹿アーティストのオレもたじたじである。オレの顔をコピーしたお面をつくり、ボンドで毛糸を貼りつけたネアリカTシャツを全員で着る。
学食の壁に巨大ネアリカ「羊のカムイ」と「家族のカムイ」を飾るとみんなぎょっとした顔で通りすぎる。通行人からはこんな声も聞こえた。
「ねえねえ、あれ見て。すごいよあの絵、神がかってるよ」
AKIRA面軍団は思いっきり怪しいし、目立つ目立つ。だって「全員AKIRA」が校門のところで待ち受け、ビラをくばるんだよ。ほかのイベントのビラ配りなんかネアリカ組に圧倒され、引いてたな。しかもスミが水戸黄門の替え歌で「アーキラーが早稲田にーやってきたー」とか大声で歌うし、AKIRA面をかぶったマユやナオに引っぱられ、「これが本物のアキラです」とかやられるし、マユの両親がそれをビデオ撮影してるし、腹がよじれそうなほど笑った。
実はそこまでやってくれるネアリカ組の心意気に感動してちょっと涙ぐんでしまったのだ。
マジ、こいつら大好き!
そのかいあって講演会には校内や外部からもたくさんの人がきてくれた。
教室の壁をぶち抜き、イスや机を取っ払い、オレも観客も床に座った。ほんとどっかの部族が焚き火を囲んでシャーマンの話を聞くような感じだ。
オレはネアリカに関する神話やウイチョル族の祭、幻覚サボテンや幻覚キノコの伝統、マヤの予言、父の死によってメキシコに導かれ、550人のボランティアでネアリカをつくった話などをした。今回早稲田に招かれるきっかけをつくってくれた矢口明子さんに、ネアリカの祈りでガンが消えてしまった話しもしてもらった。
質疑応答コーナーの最後に「どのように祈ればいいのですか?」という質問がきたので、急きょ「祈りの歌」をアカペラで歌うことにした。
子宮ガンから生還したマキちゃんの話をし、乳ガンになったヨウコの写真をホワイトボードに飾る。
「みなさんの身近で苦しんでいる人がいたら、その人を思い浮かべながら聴いてください。病気よ消えろと祈るより、その人にとってより大きな学びになりますようにと」
アカペラで歌うのは初めてだったので最初は声も出なかったが、とちゅうからみんなの力が乗り移り、完全に歌の世界にはいってしまった。
さてさてつぎはネアリカのワークショップである。
左端に立っているのが「50歳の大学生」矢口明子さん。
ボンドが床につかないようにシートをしき、いくつかのグループになって、それぞれが15センチ角の板に毛糸を貼る。ほとんどが初心者なのに、色づかいも発想もびっくりするほどおもしろい。
「知らないってことは、強いってことなんだ」(「COTTON100%」より)
すげー、すげー、みんな子供のように手をボンドだらけにして、個性的な作品群をつくりあげた。
うしろに立てかけてあるのが卒業制作のキャンバスである。150の升目はほとんど予約で埋まっている。11月4日(土)~5日(日)の早稲田祭で文学部カフェテリアに完成作品が展示されるので、むっちゃ楽しみだ。
ワークショップのあとは文カフェで打ち上げだ。
それぞれ学食で好きなものを注文し(オレはカキフライ300円!)、 学生はもちろん一般参加の人たちとも交流がはかれる。
そのあとはスミのアパートにみんなで押しかけて朝まで2次会である。(朝起きたら、足に落書きされてたけど)
矢口さんいわく「早稲田ではネアリカという単語が定着しちゃった」そうだ。
ウイチョル族は何千年ものあいだネアリカの秘密を守ってきた。
ネアリカはこの世とあの世、人間と神々、自分と他者をつなぐ、虹のトンネルだ。ネアリカはたんに毛糸絵画でなく、ウイチョル族の宇宙観そのものをさす言葉なのである。
しかし自然が破壊され、人々の絆が断ちきられた現代で、ネアリカの知恵が世界に必要となる時代がやってきたのかも知れない。
ネアリカは長いひきこもりをやめ、異邦人であるオレに伝えられ、地球の裏側にある日本へ広められた。
毛糸の絆が人々をつなげ、毛糸の波紋が広がるように若い世代へと受けつがれる。
早稲田ネアリカ組のひとりひとりと参加者全員に感謝のハグを贈る。
マジ、泣きたいくらいに楽しい時間をありがとう!
本当に、本当に、みんなと出会えてよかった。
すべての出会いは魂の家族だ。
インラケチ(あなたはもうひとりのわたしです)
「今地球は病み、死にかけている。
ウイチョルの住む山も森も削られ、
水も干上がり、
動物も消えつつある。
すべてのものはひとつに心を合わせなければならない。
人間はすべての生き物と涙を分かち合うことを学ぶのだ。
傷ついた獣の心、
刃になぎ倒された草、
母なるユリアナカ(地球)はわたしたちの肉だ、
岩は骨だ、
川は血管を流れる血なのだ」
(ウイチョル族の言葉「神の肉テオナナカトル」より)
※来週から「鹿のカムイ」とプチネアリカ(1、2)4枚が下北沢にあるギャラリーショップ「ボンベイジュース」で展示されます。
155-0031 東京都世田谷区北沢3-21-1 101
TEL/FAX 03-5738-3176 営業時間 PM12:30~PM8:30 不定休
問い合わせ:bbj@bombayjuice.com