AKIRA & ROBERT HARRIS コラボ | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

 みなさんが待ちに待ったイベント「旅々カフェ」開幕だ。
 限定50名のメール予約はわずか3日でいっぱいになるほどの人気で、北海道や秋田、長野や関西から来てくれた人たちもいる。「麺工房そば処遊」は閑静な住宅街に建つ一軒家で、マスコミ取材を拒みながらもグルメのあいだでは圧倒的な人気を誇る名店である。
 オレもここのそばを食べて以来、ふつうのそばが食べられなくなってしまった。今日はそばは出さないが、極上の海鮮丼(500円)などをだしてくれる。
 ほかにもスタッフたちがもちよった焼き菓子、天然素材のおつまみ、 ヒーリングマッサージなど盛りだくさんである。
071111トラベル・シェアリングphoto by YOKO

 1時から世界を股にかける旅人写真家ダイ(鈴木洋見)のトラベル・シェアリングがはじまる。ダイはもと日本4位のキックボクサーだったが、今ではエチオピアを中心に撮影活動を続けている。壁に飾られたエチオピアの写真は、前回高円寺で見たものよりもさらに進化(深化)し、視点のブレがなくなっている。しかもどこか「ぬけた明るさ」のようなものさえ感じた。聖者や母親や子供などの姿をとおして、ダイの人間に対する絶対的な信頼を感じられた。
 「こいつはすげえ旅をしている」
 年など関係なく、オレが敬愛する旅人である。(ダイの写真を見るべし)
 しかもエチオピアの聖者写真に紛れ込んでオレの写真が飾られている「セイント・フィンダータ(聖なる不良)」ってタイトルで(笑)。
071111ダイphoto by Dai
 やはりエチオピア帰りのピリカが「コーヒーセレモニー」(エチオピアのコーヒー茶道)をおこない、ダイが旅の話を語る。旅から帰ってきた人もこれから旅をしようとしている人も、縁側のこたつでリラックスしながら耳を傾ける。みんなで自己紹介しながら、輪が広がっていく。
 いい風景だなあ。

 3時半ごろロバート・ハリスさんが会場入りした。
 会った瞬間から、まるで兄弟のような気がした。今までたくさんの旅人や作家に会ってきたが、これほどオープンな人は知らない。
「ロバートって呼んで」
 この人は全身に「人間を愛してるオーラ」、「世界を受け入れてるオーラ」をまとっているようだ。
「アジアに落ちるを友人たちに勧めまくっているよ」
 ロバートの友人でエッセイストのマナちゃんもロバートに勧められたひとりだ。
「わたしにとって最高の本でした。 人生に枠を決めない、決して物怖じしない姿勢がカッコいいです。そして何より、全く飽きさせないユーモアセンスが最高ですね!」
 オレもロバートの本は4,5冊読んでいる。
 どうしても読者は旅のおもしろいエピソードに目がいってしまうが、オレはロバートの文章力に驚嘆した。落ちこんでいるところも恥ずかしいところもさらけだしていく勇気。いかなる思想にも依存しない独立心。自分の肉体の痛みをとおして世界を知覚していく探求心。美人に弱いところまで、オレそっくりだ。
 とくにオレは「エグザイルス・ギャングス」がいちばん好きで、ロバートが彼女と別れるとき、成田空港の駐車場で、キャビアを指ですくい、シャンパンをラッパ飲みして別れを祝うというシーンが最高にかっこよかった。
 今回のメインである対談がはじまる。
 スタッフをふくめ70人ちかい観客が目をキラキラ輝かせて待っている。ロバートを紹介してくれた澁谷「フライング・ブックス」の山路くん、「アジアに落ちる」を復刊させた「ヒマラヤブックス」の西ひろきさん、初版「アジアに落ちる」の表紙を撮ってくれた旧友伊藤健司さん、ミュージシャンの志田さんやギタリストの久保さんもいる。
 盟友タクヤがディジュリデューを吹き、場を浄めてくれる。波だった水面を沈めるように、他人同士をつないでいくように、やさしい演奏だった。
071111ロバート・ハリス&アキラ対談photo by YOKO

「はじめての旅はいつ?」
 ロバートは高校1年のとき、北海道へいき、足を折る。激痛に痛む足をかかえながらも「旅っていいなあ」と思ったそうだ。19歳の時、シベリア鉄道にのったのが初めての海外だという。
 またまたかぶってるねえ。オレもはじめての旅は高1の北海道だし、はじめての海外は19歳のアメリカだ。
071111ロバート・ハリスphoto by YOKO

 59歳のロバートと48歳のオレという旅の先輩トークにみんなが期待していたのは、「旅の極意」とか「旅の本質」かもしれない。しかしオレたちはその期待を見事に裏切り、奇想天外なバカエピソードやありえないような失敗話、オカマ話など、会場は腹を抱えて大笑いする爆笑の連続である。
「あの……そろそろ時間です」主催者のトシがもうしわけなさそうに言う。
「ええっ、もう1時間たっちゃったの? こんな楽しいトークなら3日間くらい徹夜でできるよ」ロバートが笑う。
「今度は焚き火でも囲んで、ゆっくりやりましょう。まあ、これからのライブでロバート&アキラの夢のコラボもありますから」オレが言う。
 北海道から最強の助っ人がかけつけてくれた。魂のパーカッショニスト・ジョニーさんである。前日のライブで指の皮がむけたとバレーボール選手みたいなテーピングで指を覆っている。
 さあ、今日のオープニング曲はこれしかないだろう。

1.Traveling man
071111アキラ&ジョニーphoto by YOKO

 ONSENSのベーシスト・リュウが「いつのまにこんなすげえ曲をつくったんだよ。おれにも教えないで」と怒っていたというエピソードがうれしい。

2.旅立ちの歌(ポエトリーリーディング:ロバート・ハリス)

 ロバートとのコラボ曲もこれしかないだろう。ロバートが作詞した「エグザイルス」と「旅立ちの歌」がまるで最初からコラボのためにつくった曲じゃないの? というくらい見事に溶け合う。

3.雲のうえはいつも晴れだから
4.だいじょうぶマイフレンド
5.祝福の歌

 ここでご近所さんから苦情がはいる。
「こんな住宅街でなにやってんだ!」
 主催のトシとオーナーの大森さんが出向き、なだめてくれる。
「だいじょうぶ、これ想定内のことだから」
 マイクをはずし、生声で歌うことにした。観客にぎりぎり前へつめてもらい、みんなが「東京難民」のように体を寄せ合う。
 さまざまな試練をくぐってきた旅人はピンチをチャンスに変える魔法を知っている。このハプニングによって、みんなに共犯者的な一体感が生まれたんだ。

6.「アジアに落ちる」朗読
7.Life is beautiful
8.家族
9.Unconditional love
10.たったひとつの命
11.Walking in the rain
12祈りの歌

「Walking in the rain」とともに降ってきた雨が縁側のブルーシートを叩き、雷が鳴る。ご近所に対する騒音を消してくれてありがとう。オレには自然界や死者たちの万雷の拍手のように聞こえたね。
 ラストの「祈りの歌」を歌いながら無数の目に見つめられているのを感じた。観客はもちろんだが、ダイの写真に切りとられた人々の視線である。飢える者、乳を飲むもの、笑う者、すべての人々が様々な形で祈っている。歌いながら不思議な啓示が降ってきた。
 どんな無様なことをやっていようと、生活に追われていようと、病に倒れていようと、
 生きているということ自体が祈りなのではないか?
 そう命そのものが祈りなんだ。
 雷さえしのぐアンコールの拍手に、やはりロバートにでてもらうしかないだろう。
071111ロバート・ハリス ポエトリーphoto by YOKO

13,青空のむこう(ポエトリーリーディング:ロバート・ハリス)

なんにも縛られず
なにものも縛らず
心ののぞむまま
自由に生きてきた
悔やんではいない
後悔もしてない
ただ両手を広げれば
なにものこらない
青空のむこうがわに
大切な忘れ物がある
せつなくて胸がはり裂けそう
この空を塗ったのは誰?(AKIRA)

僕に言えることは、「自分の道を行く」ということは、実際に旅に出るかでないかという問題ではないということだ。自分らしく生きたいと願い、行動にでた人間は、みなその時点で、地図も海図も羅針盤も役に立たない、長い航海へとすでに旅立っているいるのだと思う。要はそんなことを願い、行動にでられるかどうかということではないだろうか。(ROBERT)

寂しがり屋のくせに
ひとりで旅をした
友だちを裏切り
きみを傷つけた
突然のさよなら
むりして微笑んだ
ひとりぼっちの部屋で
すすり泣いていた
青空のむこうがわに
大切な忘れ物がある
まぶしくて君が見えないんだ
この空を塗ったのは誰?(AKIRA)

まず一歩、踏みだすことだ、と僕は思う。その第一歩からすべての道は始まる。そして旅の途中、忘れてならないのは、「自分らしさ」を、現実の社会で生きる大変さのせいで歪ませたりしてはいけないということだ。(ROBERT)

同じ空のした
きみは笑うかな
もうないものねだりはよそう
ぼくはぼくでしかない
強がらなくていい
弱くてかまわない
臆病なぼくを
そのまま抱きしめて
青空のむこうがわに
大切な忘れ物がある
ぼくたちが光に還る場所
この空を塗ったのは誰?(AKIRA)

人間にはすべて、自由に、溌剌と、情熱的に、つまり自分らしく生きる権利があるんだ、と僕は信じてきた。その思いが僕を常に僕を支えてきてくれたし、砂漠のなか、闇の中での道標になってくれた。
もうひとつ言えることは、どこにいようが、何をしようが、自分に忠実に生きていく者には運が味方してくれる、そして同じようなハートを持った仲間が集まってくると言うことだ。つまり「自分の道を行く」という旅は、決して苦悩だらけでも、孤独なものでもないということだ。(ROBERT)

青空のむこうがわに
大切な忘れ物がある
せつなくて胸がはり裂けそう
この空を塗ったのは誰?
この空を塗ったのはきみ?
この空を塗ったのはぼく?(AKIRA)
071111ロバート&アキラ&ジョニーのコラボphoto by YOKO