結婚肖像画が完成! | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

 油絵に飢えていた。
 2004年1月に松島トモ子の「ホームレスさんこんにちは」(めるくまーる)に表紙を描いて以来の油絵制作である。
 ニューヨーク時代の2年間、ギリシャ、イタリア、スペインの5年間、帰国後の1年間、合計8年間は油絵に捧げた。
 スカトロアートや偽アンディーウオーホルやネアリカもいいけど、やっぱオレ油絵が好きなのよねえ。しかも風景画や静物画より肖像画がおもしろい。
 人間が大好きなんだ。

 蔵王オペラにきてくれた内科医・冬姫(ふゆめ)から注文がきた。
 オレがハワイで働いていたジェットスキーのオーナーも医者だったし、神戸ライブにわざわざ高知からきてくれた松谷医院長もファンキーだし、変な人多いなあ。(お医者さんごっこって「変態養成ギプス」!?)
「葬式に飾る絵がないから肖像画をお願いします」
 おーい、結婚肖像画のあとは葬式肖像画かよ!
 といっても、「自殺願望があるわけじゃない」と聞いて安心した。オレも「明日死んでもいいから、好きなことをやる」と思って日々を生きのびているが、医者も毎日のように生と死にむきあっている。
 「昨日の夢に~さんがでてきて、朝出勤して引き継ぎしたら~さんが亡くなっていた」という話しもよくあるそうだ。
 冬姫のモトカレが結婚して、その奥さんからの妄想電話で悩んでいるという。オレはこうアドバイスした。
「自分の感情は鏡だから。冬姫がまだ自分のなかで後悔や未練を残してんじゃないの? モトカレや奥さんじゃなく、冬姫が心のなかでモトカレへの想いを断ち切ったとき、バミューダ・トライアングルは消えるだろう」

 宮古島のたまみから「おじいちゃん(97歳)とおばあちゃん(90歳)を描いて」とハガキがきた。
 たまみの祖父母は栃木県に住んでいるので、3日後に訪ねる予定だ。
 オレは小学校時代に両親が別居したので祖父母に育てられたし、「老人大好き人間」なのだ。
 シワっていいよね?
 オレがアメリカインディアンに魅せられた最初のきっかけはシワなのよね。長老たちの赤銅色の顔に刻まれたシワはむっちゃカッコイイ!
 オレは自分の顔に刻まれた「笑いジワ」が好きなのよ。ユサっていうやつが「アキラさんの笑いジワ、ボブ・マーリーとそっくり!」と言ってくれて自信が湧いてきた。もうシワ自慢しちゃうもんね。
 とくに女性は「カラスの足跡」なんて恐れるけど、星野道夫のワタリガラスの伝説みたいに足跡を刻んでいきたい。マーリーやインディアンのように深い笑いジワを刻んでいきたいんだ。
 ちなみに再春館製薬の「ドモホルンリンクル」は、「Domo=抑制」(ラテン語)+「horn=角質」(ドイツ語)「Wrinkle=シワ」(英語)を組み合わせてつくった造語だという。
 たまみの祖父母(97+90=187歳)が、いきなりこんな珍獣がきて、心臓麻痺を起こさないか心配である。

 新潟のはなびがスペイン時代の傑作「ビールとギターとキャンヴァスと」を買ってくれた。暗い宗教画ばかり描いていた当時の作品のなかではかなり異色な作品だ。よく「無人島にもっていくとしたら?」みたいな心理ゲームがあるけど、オレはビールとギターとキャンヴァスがあればいい。
 それだけで世界は足りている。
 きのうのミクシでガンから生還したマキがすごくいいことを書いていた。
「どんなに健康に恵まれていても、どんなに優しい家族に恵まれていても、どんなにお金持ちでも、それ(心の目線)に気がつかない人は幸せになれない。」
 NAOKOさんのコメントもいい。
「ルイ・アームストロングの歌で、ビールがあと半分しかないとおもうか、まだ半分もあると思うかの違いだよ。この世は美しい、what a wonderful worldだ。っていうのよ。」
 それにしてもはなびの生涯はすさまじい。ひとりの人間にこれほどまでの苦難がつぎからつぎへと襲いかかってくる。すごい名文なんで、はなび自身のメールから抜粋しよう。

父に愛されていないと感じてた子供の頃 父の暴力や世間大人の愚かさ汚さに耐え切れずひとり佐渡ヶ島で暮らした14才。
16才の秋交通事故に遭い骨折十数箇所で7年間の闘病生活を送っていた青春時代。母が信濃川に流れて死んでた13年前の冬のこと。
心が面白いように壊れて首を吊ってみた夜のこと。
何日も海岸をさまよっていた夏の日、捨て犬みたいに保健所に保護され初めての精神病院入院措置となった爽やかな朝。
弟が首を吊り死んだ海岸の松林の匂い。癌細胞が喜んで私の身体を蝕む音。生きることを選択させた姉の言葉に愛されてる自分を見つけた日のこと。切り取られた食道胃袋胆嚢。
再発の恐怖に怯えお酒に救いを求め地獄を見た日々。
衰弱しきって意識がなくなり病院へ運ばれ2度目の精神科入院となってまた生かされてしまった自分の運命を憎んだ日のこと。
急性薬物中毒で蘇生処置を受けたときの物凄い苦しみ。
事故の後遺症のため5度目の脊椎手術への複雑な思い。
歌と共にそれらの記憶が鮮明に蘇ってしまった。
痛いことだらけの人生でも そんな星の下に生まれちゃったからしょうがないね。
この先も運命を嘆かず受け入れて生きてく。
生きづらさや痛みを知る人たちとの運命の出逢いによって
少しづつ変わろうとしてる今の私を愛してあげたい。(以上抜粋)

 はなびは「こわれ物の祭典」にかよい、オレと月乃さんの「どん底からの出発」ライブやお寺の追加公演、蔵王オペラにもきてくれた。さまざまな出会いのなかではなびの呪縛が少しずつほどけていく。「ひとりぼっちじゃない」「すべてはつながっている」ことに気づいたんだ。
 しかし1ヵ月前、今度は卵巣腫瘍が発見される。来週の29日には摘出手術だ。今までの脊椎手術にくらべたらましかもしれないが、子供は産めなくなる。オレはまた突拍子もないアドバイスをした。
「今までの輪廻で何度も子供はもうけているから、今度は子供がいないときでしか学べないことを学べってことかも」
 はなびの素敵な笑顔は、無数の困難を乗り越えてきた勇者の微笑みだ。

 ついに結婚肖像画が完成した。
 注文の絵はわりと小綺麗に描くのだが、今回はペインティングナイフをつかって厚塗りに仕上げた。エツとトシがもつ存在感が画面から浮きあがってくる力強い絵になった。
 それでは絵の制作過程を見ていこう。
 1、赤茶色の下塗りに黒と白をおいていく。
 0609エツ&トシ1

 2、中間色が加わる。
0609エツコ&トシ2

 3、色彩が加わる。
0609エツ&トシ3

 4、グレーズ(リンシード・オイルにうすい色をといてかぶせる技法)をかけて肌の質感を出す。細かいニュアンスを微調整して完成。
0609エツ&トシ4

 5、アップにするとペインティングナイフで描いた荒々しいタッチ(レンブラントの技法)がわかる。(ウェブじゃ見えないか?)
0609エツ&トシ5

 彼らにたのんで10月21日の大宮「アルカス・カフェ」ライブにもってきてもらおう。
 肖像画はあと1名だけ受け付けるので、早い者勝ちでーす。