北海道ライブレポート1 | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

6月28日(木)
 札幌千歳空港には道東ツアーを企画してくれた黒豆さん、関西ツアーのドライバー・タック、黒豆さんの息子でドラム(ドラ息子ではない)のタクヤが迎えにきてくれた。
 東京が30度、札幌が20度と掲示板に出ていたが、Tシャツでじゅうぶんである。
 腹がへったのでタックおすすめのラーメン屋「橙屋(だいだいや)」へいく。前回までに「けやき」、「てつや」、「すみれ」、「純連」、「五丈源」などの芽移転を食べつくしたオレはそれほどの期待をいだいていなかったが、食べてビックリ。「橙屋」はそれらの名店にもひけをとらないすばらしい逸品だった。
 しっかりとしただしに、こってりの味噌、細麺の腰やスープとのからみも絶妙だ。
 とか言って、やっぱりグルメツアーじゃーん!
0707橙ラーメン

 移転して黒豆は見ちがえるように店らしくなっていた。
 リチャードの大きなコラージュ作品やさまざまな人が壁に直接描いていった絵がならぶ。圧巻は交響楽団から譲り受けたグランドピアノである。なんと鍵盤が本物の象牙でできている。
 そのタイミングで登場したのが天才ピアニストハジメくんだ。
 さっそくオレはハジメくんに「雲のうえはいつも晴れだから」の譜面をわたし、着いて1分なのにセッションをはじめた。ハジメくんの超絶ピアノは天然リバーブの効いた俺のボーカルがからむ。観客はもちろん、オレとハジメくんまで言葉をなくした。
 二人は無言のまま目で会話した。
「これが音楽だ!」って。
 さらに天才ギタリスト・とーるが到着する。とーるは今度のアルバムのアレンジ、演奏、コーラス、録音を一人でこなしている。すでに「ソウルメイト」、「UNCONDITIONAL LOVE」、「BEAUTIFUL」のアレンジはおわり、すごい楽曲に仕上がっている。
 アキラ、とーる、ハジメのセッションが火花を散らす。
 黒豆さんがにんまりと言い放った爆弾発言にぶっ飛ぶ。
「明日からこのスーパーセッションが10本も見られるのね」
 オレは心臓が飛び出しそうだ。
「えー、ハジメくんととーるとツアーにでるってこと?」
「もちろんよ」
 魔女よ、この人!

6月29日(金)
プロデューサーの黒豆さん、ハジメくん、とーる、バイオリンのリナは、タックと規加がドライバーを務めるキャラバン号2台にのりこむ。キャラバンは広大な北海道を東へ横切る。
 初仕事は釧路にあるラジオ局「FMクシロ」で生放送出演だ。ハジメくんは何度もこの番組に出演している。ハジメくんはメジャーデビューCDの発売記念で出演するのにオレを呼んでくれた。
0707FM釧路

 番組も笑いとともに終了し、ハジメくんおすすめのカレー屋「黒魔術」へいった。スープカレー(700円)とキーマカレー(700円)のみだが、どちらも絶品だった。札幌の有名店に勝るとも劣らない味なのだ。釧路へくることがあったらぜひ「黒魔術」へよってみて。
0707黒魔術カレー

 ハジメくんが野宿しながら名曲「サバンナ」を作った釧路水門へいった。
 なんとも美しい古びぐあいに、テレビや雑誌などに登場している。門の上に建つ小屋から釧路湿原がながめられる絶景だ。
0707釧路水門

 冬にライブをやらせてもらった「ゼロポイントウェーブ」オーナー竹岡さんの別荘へむかう。
 あたりは暗くなり雨の降りしきる中、弟子屈町のベルサイユ宮殿(笑)とも言える建物が見えてきた。いやいや別荘は、カナダの巨木を使ったログハウスで、大きな露天風呂までついている。
 着いてまもなくライブがはじまりトップバッターは、札幌で何度も共演させてもらっている「熊&ウッキー」だ。力強くやさしいギターとフラメンコ調ウクレレが観客をつつみこむ。
 続いて登場したのは同じキャラバン号に乗り込み、今回の道東ツアーを一緒にまわってくれている天才ギターリスト「とーる」だ。
 彼のライブは、その場の状況を歌う即興からスタートする。いつもなら「今日はどんなネタからはじまるのだろう?」とワクワクするのだが、今回はそこにドキドキが共存した。と言うのもとーるは、オレが到着した日の夜、黒豆でパーカッションを演奏中に右手の中指を打撲し、ついさっきまで湿布・割り箸の添え木・テーピングの三点セットで、腫れ上がった中指第二関節をぐるぐる巻きにしていたのである。
 しかし、はじまってみればとーるはとーるだった。掴みの即興でしっかりと笑いをとり、怪我人とは思えない繊細さと力強さで観客を魅了した。途中、バイオリンのリナが参加し、会場に優しい空気を注いでくれた。
 とりわけオレを感動させたのは「青空のむこう」だ。オレの真似ではない(散々モノマネをしていた、という噂も聞いていたのだが)、とーるの青空が広がっていた。
 ハジメくんととーるをむかえ、スーパーセッションがはじまる。
0707屈斜路湖竹岡別荘

1. 雲のうえはいつも晴れだから
2. マーマレードスカイ
3. BEYOND THE BORDER
4. 家族
5. 祈りの歌

 空気が動く。
 木のぬくもりあふれるその空間に涼しくさわやかな風が吹き込んだかと思えば、あっというまに熱気に包まれ聴衆の心をわしづかみにする。オレたちはもちろん、観客も自然と体が動き出す。その場にいた全員を巻き込み、それぞれパワーが一つになる。鳥肌がたつ。
 想いが耳でも脳みそでもなく、真っ直ぐに届く。
 ふと見ると、ハジメくんといとーるがにんまりと笑っている。まさに1+1+1=3ではない、化学反応が2乗にも3乗にもなるマジックだった。
 さあ、世界最強のトリオが北海道に魔法をかけるぜ。