いよいよ取り壊しがはじまった。
うちへとつづく５軒の長屋の遠いほうから壊されていく。
もちろんうちはまだ壊されないよ。
まだ住んでるんだから！
四川省で家の下敷きになった人たちのニュースを見ると、オレまで下敷きになることを想像してしまう。
とりあえずオレの引越し先が見つかるまでは住んでいいことになっているが、まだこれだといったところが見つからない。
ふるさと日光でもついに初のホームレス誕生か。
３日後にとーるがやってきてまたレコーディングがはじまるというのに。
バキ、バリバリ、ズドーン……
形が崩壊していく音には、なにかやりきれないものがある。
家に染みついた記憶までもが根こそぎ壊され、ゴミとなって処分されていく。
家族たちの記憶をキャンバスに描きながらこの破壊音を聞いていると、
泣きだしたいくらいせつなくなってくるんだ。
断片