お通夜ライブ | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

小笠原ライブが決まった。
7月12日(火)の午前10時、竹芝桟橋から出るフェリーにのって、翌日13日の午前11:30、父島に到着する。
そこでライブを2,3本こなしつつ、19日に誕生日を迎え、10日間滞在する。噂では「小笠原はポリネシアだから、沖縄よりいいよ」(小声)とのことである。
むっちゃ楽しみー!
帰りは22日14:00発のフェリーにのり、東京着が23日の15:30。その足で相模湖のキャンプライブに直行する。ハードだなあ。

もうこんなにスケジュールがつまっていたら、絵を描く時間がない。9月までに120号の新作10枚ってのは絶対不可能だよー。(涙)
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今日も徹夜して朝の9時まで描いていた。
すると妹の旦那カズやんから電話があった。
「あんちゃん、今日お通夜ライブやらない?」
下北ライブをやっていた20日、妹の嫁ぎ先であるお父さんが肺がんで亡くなったのだ。建設会社の社長であり、やさしい物腰の人だった。
昨日焼香にうかがったとき、残されたお母さんの慰めになるよう「家族」のCDをプレゼントした。それを家族一同で聴き、感激し、「ぜひお父さんのために通夜で歌ってもらおう」ということになったそうだ。
まあたしかにオレの歌は老人から子供まで年齢を問わないし、結婚式や葬式にも対応できる世界でも類を見ない全天候型ではある。
それにしても嫁の兄というのはむこうの親戚などに知り合いがいないし、変なルックスだし、いきなりお通夜でライブって、いいのかよ? ってビビっていた。

建設会社の社長で膨大な人脈をほこる義父のお通夜には500人くらいの人々が集まってくる。喪服にドレッドを後ろで束ね、ギターケースをかかえて歩いていると、参列者からかなーり「この場違い男は何者だ?!」という視線を浴びる。入り口をはいると、オレが驚いた。
な、な、なんだ、このBGMは?
オレの「絆」が大音響でかかっているではないか!
こんなロックテイストのお通夜っていいのかよ。
つい昨日までは、わけのわかんないことをやってる、嫁の兄と思われていたのに。不思議なことにアルバム「家族」(試聴)は、人間関係を一瞬で塗り替えてしまう恐るべき魔力があるようだ。
神道のセレモニーがすみ、退場のときには「今日は死ぬのにもってこいの日だ」が流れる。
うおー、いいのかよ、いいのかよ。インディアンじゃなくて、田舎の善男善女のまえで「死ぬのにもってこい」なんて叫んじゃって。
参列者を見送り、残った親族で食事とお酒をとる。それでも100人はいる。なにしろ義父は11人兄弟だし、孫だけでも33人もいるのだ。
「では、お願いします」
食事と酒でざわつく会場でノーマイク、しかも怪しいルックスで場違いな嫁兄というかなりきびしい状況である。
「お手元にくばりましたコピーに歌詞が書いてあります」
妹の旦那カズやんがアナウンスする。
おおー、いつのまに、そんな下準備までしてくれていたのよ。それでも会場は酒がはいっているし、ひさしぶりに会った思い出話に花を咲かせている。
リクエストされた歌は3曲。どの順番でやる?
「おまえがー!」とシャウトした瞬間、みんながいっせいに顔をあげた。頭のサビが終わるころには会場がしんと静まり、みんな食い入るように歌詞コピーを見ている。

1、 今日は死ぬのにもってこいの日だ
2、 Life is beautiful
3、 絆

1曲目が終わり、盛大な拍手が起こったのには、こっちがびっくりした。まったくオレの歌なんか聴いたことのない人たちである。「Life is beautiful」で、会場は泣いている。
「絆」では手拍子まではいり、蛍光ライトまで振りそうな勢いである。身内は「きっと会える 必ず会える 」と合掌じゃなく、合唱していた。

きっと会える 必ず会える
たとえ生と死が
ぼくらを裂いても
赤い糸で結ばれている
ぼくらの絆は
永久に切れない

きみは死を選び
ぼくは生を選んだ
すべての必然に
まちがいなんてない

今度会うときは
またいっしょに
やり残した宿題
学んでいこう

終わりなんてただ逆向きの
はじまりにしかすぎないさ

きっと会える 必ず会える
たとえ生と死が
ぼくらを裂いても
赤い糸で結ばれている
ぼくらの絆は
永久に切れない

悲しみの闇は
心地いいけど
きみが残したものは
罪や後悔とかじゃない

きみが命まで捨てて
伝えたかったこと
分かち合うこと
助け合うこと
愛し合うこと

もしも死を知りたけりゃ
まずは生を知ることだ

きっと会える 必ず会える
たとえ生と死が
ぼくらを裂いても
赤い糸で結ばれている
ぼくらの絆は
永久に切れない

空の高みから
きみが手をふる
生きろ!ぼくの分までって
笑ってる

断ち切れた絆
つなぎ直すため
もう一度命の意味
考えてくれ

肉体の衣装を脱いだって
魂の旅は終わらない

きっと会える 必ず会える
たとえ生と死が
ぼくらを裂いても
赤い糸で結ばれている
ぼくらの絆は
永久に切れない

義母の出身である広島の呉から親戚がきていて、「9月11日に呉でライブやりますよ」と言うと、「うちに泊まって」という。
なんだか、いっきに「場違いな嫁兄」から「親戚のヒーロー」になってしまった。
「明日の葬式でも歌ってください」カズやんが言う。
インディアンのフューネラル(葬式)でもないのに、こんなにウケていいのかよ!(笑)
ということで、明日は700人ライブだ。
死んだ義父の名前も「明」だし、義父がこんな場をつくってくれたのだと思う。
こんなにオレの歌が葬式にぴったりだったなんて、気づきもしなかったよ。おまけにCDがむっちゃ売れてサインたいへんだったし、「お通夜で稼いでいいのかよ!」って感じだ。
みんなが食べ残した大量のエビフライやフライドチキンなどをぜんぶオレが持って帰る。せっかく命まで投げ出してくれたエビちゃんやチキンちゃんを捨てたらバチがあたる。冷凍保存して1ヶ月はおかずに困らないな。同じメニューだけど。
これからは世界初の「フューネラル・シンガー」(葬式歌手)という分野を確立し、
……食っていけるかもしれない。