一生手にはいらぬ宝 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

マンガみたいに波乱万丈の人生である。
080605解体

個展をおこなう10月中に引っ越さねばならない。しかしこれだ! と言い切れる候補は見つからない。あまりに追い込まれたので、ダメもとで大家さんに電話してみた。
「あのう、引越し先がなかなか見つからないので、あと1年くらい住まわしてもらうことはできませんか?」
「いいですよ」
ええー! 夏には「いますぐ出ていってください」みたいな勢いだったのに。
いかなる心境の変化か?
基本的に代々80年もつきあった大家さん夫婦はとてもいい人なのである。
とりあえず1年はここにいられる。
引越し先を探してもらってた友人たちに電話すると。
「やったー、これで裏世界遺産(AKIRA邸)が守れる!」
「おおー、AKIRAさんちを訪れる何万人が救われる!」
「これで来年の個展には新作の絵が見られる」
など、大喜びだ。(オレの家なのに)
やはり世のため人のためと声を枯らしながら励ましの歌を歌い、苦行僧のように重いバックパックを担いで諸国放浪してきた徳が神様に認められたのじゃ。
やはり神様は見てるのお。
はっ、いつもオレをもてあそんでいる神様のことだ。
きっとこれは罠である。
オレをつぎなる運命のランドリーにほうりこんで大笑いするための準備やもしれん。
オレの1年は人の10年分くらいあるので、きっと予想もできない展開がおこり、残り1年もあれば、引越し先も見つかるだろう。
ああ飯炊き釜からたちのぼる白い湯気、
ああ風に身をよじる洗濯物、
ああ暴れ牛のような掃除機の遠吠え、
なんという崇高な、
神聖な風景であろう。
本当の幸せとは、
フツーの生活にあるのだ。
ああフツーよ、
ああ安定よ、
ああ平穏よ、
わしごときには一生手にはいらぬ宝なのか!
080823akiracake.jpg