シャーマン候補生、石垣島で「乳ガン先生」について修行しているヨウコからこんなメールがきた。
AKIRAさんが足のすねを大怪我する夢を見ていたよ。
足が縦にぱっかーんって割れていた。
骨まで見えるぐらいの怪我。
骨と肉の間は空洞だった。
鮮やかに絵にかけるぐらい覚えているよ。赤い筋肉と骨。
トイレのタンクはおうちの足のすねだったのね…。
なるほど「トイレ大先生」が身代わりになってくれたのね。
トイレ大爆発なんて一生に一度の祭だった。
しかし祭りのあとには現実が待っている。
PISSは警察署前の野外で立ちション。
BIG BENは東武駅まで走っていく。
都市化した現代において、人間は一生トイレのない生活はできないのである。
「グーグル・デビル(検索の鬼)」と呼ばれたオレは、必死に情報収集する。ポイントは吉野氏の格言のごとく、
「安い」「早い」だ。
「安い」は低所得者にとって絶対だが、「早い」も、明日早稲田でやる「ネアリカ講演」の原稿を書いているオレには必要なのだ。せっかくいい内容が浮かんでも、外で立ちションしてると、「美しい青空、生きるってすばらしい」とか、「あのババア、まだゲートボールいってんの」とか、雑念にかき消されてしまうのだ。
日光今市近辺のホームセンターに問い合わせたが、増改築やってるくせにトイレの在庫はもってないのね。
関東最大のホームセンター「JOYFUL HONDA」に電話した。
しかしトイレの状況を把握しないと見積もりはでないので、営業がまずうちまでこなくてはいけないという。この営業マンが栃木県ぜんぶをカバーしなくてはいけないので、日光にこられるのは1週間くらい待たなければいけないという。
「直接営業のスケジュールを確認しますから、少々お待ち下さい」
5分後に電話がかかってきた。
「ちょうど今日営業が別件で昼ごろ日光へいくそうです」
おおーっ、すげえ幸運!
1時に営業の竹内さんが我が家にやってきた。竹内さんは30歳くらいの男性で、オレの細かい質問にも真摯に答えてくれた。
問題は金額である。
JOYFUL HONDAでいちばん安い便器は「ネオボルテックスRA608WTBN-L1」(名前長えな)、23800円だ。
しかし壁から排水口の距離が決まっている。もしうちのせまいトイレに設置すると便器が前にせり出し、ひざがつっかえてしまう。壁と排水口を調節できるアジャスター型の便器「RA-1585BTBN」(これも長えな)は39800円だ。
便器って意外に高いのよね。
ほとんど独占企業である「TOTO」は10万以上もする。その点「アサヒ」は価格破壊に挑戦している。「RA-1585BTBN」の同機種を検索したが、JOYFUL HONDAはかなり安い。
しかも「便器取り替えキャンペーン」をやっているので、格安のパック料金がある。
しかし筋金入りの貧乏人であるオレは「格安パック」などではだまされない。竹内さんに細かい内容を聞く。まずは普通の便座をつけた通常料金。
39800円(便器)
5980円(便座)
6000円(処分費)
19500円(工事賃)
2000円(諸経費)
3665円(税)
ーーーーーーーーーーー
76944円(合計)
つぎにウォシュレット(洗浄便座)のパック料金。
39800円(便器)
19800円(便座)
6000円(処分費)
19500円(工事賃)
2000円(諸経費)
4355円(税)
ーーーーーーーーーーー
84000円(合計)
ううむ、7000円のちがいで、ウォシュレットかあ……。
正規料金でウォシュレットをつけると、91455円。
「格安パック」は7455円のお得である。
思えば小石入りペットボトルで1年1000円の節約をするはずが、84倍になってしまった。
うう~ん、悩む。
ヒッピーの長老ナナオさんはトイレットペーパーもつかわない。ケツをふかないというか、「フン切りがいい」のである。オレはそこまで到達できないなあ。
ウォシュレット……
Let wash(洗え)……
すべてを洗い流せ……
世界は意味で満ちている。
すべてのタイミングは「ベスト」。
いきあたり……バッタリ倒れろ。
明日の生活費もままならないのに、言っちゃいましたー。
「ウォシュレットをお願いします!!」
もしも玄関にトイレがあったら。
もしもこたつにトイレがあったら。
もしも仏壇にトイレがあったら。
もしもキッチンにトイレがあったら。
もしも書斎にトイレがあったら。
というわけで、うちにウォシュレットがきちゃいましたー!!!