ふうー、毎日走りまわっているのでメールの返事が書けません。寛大なみんななら許してくれるだろう。というわけで、群馬から帰ってきました。
6日につきちゃんが車で迎えにきてくれ、ヨウコと付き添いのオレを乗せ一路群馬にむかった。
ヨウコは石垣島での抗ガン剤治療がまったく効かず、本格的な治療がおこなえる本土への移転を考えていた。友人の少ない石垣島では入院時にサポートしてくれる人もいない。
そこで名乗りを挙げたのが「チーム群馬」である。
前橋で自然食の店「サンデールーム」を営むつきちゃん&ミッちゃん姉妹をはじめ、たくさんの人たちがヨウコをサポートしようと引っ越し先まで探してくれた。
家族がだめなら、魂の家族がいる。
本当にありがたいことだ。こんな人気者の病人はいないぜ。
オレとヨウコは、「治療を楽しもう」と決めていた。
まずはつきちゃんがお勧めの漢方医「栄光診療所」を訪ねる。
ボサノバが流れ、和風の喫茶店のように落ち着ける待合室だ。小野先生は西洋医学も修め、音楽コンサートを主催したり、飾ってある写真の腕もプロ級である。ゴスペル歌手の奥さんとともにイラクの子どもたちをサポートする活動もおこなっている。
オレとミッちゃんもいっしょに診察室で話を聞く。
「抗ガン剤というのはミサイル攻撃のようなものです。標的を破壊してもまわりで被害を受けた人々がまたガン細胞に代わってしまう。ならば人々を援助してこれ以上細胞がガンにならないように免疫自体をあげる。それが漢方の考え方なんです」
ときにユーモアを交え、わかりやすく説明してくれる。奥さんの温かい人柄といい、信頼できる人たちだなと思った。
診療代がわずか1000円というのも驚いたが、処方箋をもって薬局から受けとった漢方薬も保険が適用され1週間分で1000円だった。
ミッちゃんちでヨウコの歓迎会を開いてくれた。
極上のサンドイッチや鍋で歓談したあと、みんなで祈った。ヨウコを寝かせ、オレがヨウコの患部に手をのせ、つきちゃん、ミッちゃん、高校教師の旦那トモキさん、小学校教師のアユハ、大学のフランス語講師トモコが手を重ねる。
「お、重い! 心臓マッサージじゃないんだから」とヨウコが笑った。
いちばん下のオレが祈り終わると手を抜き、いちばん上に重ねる。つぎの人の手がヨウコの患部に触れ、祈り終わると手を抜き、いちばん上に重ねるというのをくり返していく。
15分ほどたっただろうか。明かりをつけると、ヨウコはもちろん、みんなのほほが濡れていた。
「あれ、いつ泣いたんだろう?」
「そうそう、不思議なんだよね。悲しいとか、かわいそうとかいう気持ちじゃないのに、自然に涙がさらさらっと流れてきたの」
「なんか、こっちまですっきりした」
「泣くことはコルチゾール濃度(ストレスホルモン)を下げるっていうから、祈りでストレス発散したんじゃない?」オレが言う。
そうなのよ、これも祈りの実験データにあるけど、祈った本人の病気が治ったり、精神状態がよくなったり、健康になったりする。
オレはこれを「シータ波」状態だとみている。シータ波は、眠りに落ちる直前や覚醒するまえの意識状態だ。直感や瞑想や夢想などのイマジネーションが飛翔する、意識と無意識の出入り口である。
他者のために祈るという行為が、日常の雑念を眠らせ、自己治癒力を司る大いなる無意識にアクセスするのではないかと思っている。
こうなったらオレも「若返る祈り健康法」とかの本を書いたり、「美肌のためのエステティックサロン・いのり」でもオープンするか。
翌朝ヨウコがキッチンのカウンターで胸をさわっている。
「この4日間でガンが小さくなってきた気がするのよねえ」
「オレもヨウコが着いた晩から毎日さわってるじゃん。気のせいかなあとか思いつつ、はじめは球形ドームみたいだったガンが両脇の部分がへこんで、アボリジニのエアーズロックみたいになってきたような気がする」
基本的に誰しも強力な自己治癒能力をもっている。それをせき止めているのが、トラウマや否定的感情のダムである。
ガンから生還したマキや明子さんにはあっというまに「祈りプロジェクト」が発動したのに、ヨウコの場合は頑固だった。新潟、関西、広島、関東などのライブで「祈りの歌」を歌い、たくさんの人に祈ってもらったのになんの効果もあらわれない。もと夫の暴力や両親との葛藤などの不信感や子供のころからつづいてきた自己否定が強大なダムを築いていたのだと思う。
「やっぱ祈りで病気が治るなんてまぐれだったんだ。ヨウコに祈りはとどかない」とあきらめかけていた。
ヨウコは2週間ほどまえのミクシ日記(10月22日)でこう書いている。
きっともうすぐ実際のがんにも触ってもらえると思う。
そうなったらがんはあっという間に治ると思うんだけど~~。(以上抜粋)
「そうだ、計ってみようか!」
ミッちゃんがメジャーをもってくる。ヨウコは胸の上部をはだけた。
「うわっ、色が変わってきてるぞ」
1ヵ月ほど前の写真を見ると、ガンが皮膚の表面近くまで盛りあがり、赤く充血していた。もしガンが皮膚を突き破ったら「失血」という最悪の事態になる。
中心をとりまく2段目は肌色に再生しはじめ、中心の腫れは引き黒ずんだ皮膚がかさぶたのようになろうとしている。かさぶたの下で新しい皮膚が再生しているように見えた。素人診断だからまちがっているかもしれないが、どう見ても絶対よくなっているよね?
2006.11/7
オレがおそるおそるメジャーをあてる。
「どっからはじめて、どこで終わればいいの?」
「ここのやわらかくなってる角から、こっちのやわらかくなってる角までよ」
ヨウコが指をあてて指示する。たしかに硬いしこりとやわらかい部分の差がはっきりとある。
「2週間ほどまえ妹へ手紙を書くときに患部を計ったの。そのときはゆうに10センチあった」
「ええと5、6、7……8センチ」
「わあ、2センチも小さくなってる」
「……ということは?」
「ついにダムが崩れはじまった。祈りが発動しはじめたんだー!」
満月や強風と、自然界もダムを壊すのに協力してくれたようだ。
ヨウコが引っ越す家を見にいった。
まえにオレたちがライブをやった大蓮寺がある前橋の商店街だ。いい感じにさびれていて、昭和レトロななつかしさがある。この弁天通りを活性化させようとする拠点「弁天村」はさまざまなイベントを催し、オレたちもライブでお世話になった。弁天村村長の娘きのこちゃん(なんと名前はようこ!)は美容室「valo」(ヴァロ)を開いている。
2階が「ヨウコの窓」になる。
古い木目の床やアンティックの家具が素敵な空間をつくっている。正面の棚にはたくさんの絵本がならんでいた。きのこちゃん自身も素敵な人でゆったりとした時間をまとっている。彼女がヨウコのルームメイトになるってすばらしい。
ヨウコの部屋となる2階を見せてもらった。大きな窓から商店街が見下ろせる部屋と6畳ほどの和室がある。いいな、いいな、マジ落ち着ける雰囲気だ。
きのこちゃんがヨウコのカツラをカットしてくれた。
手前左から、ミッちゃん、つきちゃん、ヨウコ、キノコちゃん
こうして温かい人々のぬくもりが、ヨウコの孤独とガンを溶かしていくだろう。
石垣島ではびくともしなかったギャートルズの石の車輪が転がりはじめた。
この勢いを止めないためにも、みんなもたのむよー。
一丸となってバラバラに、
祈りを加速させてくれ。
※「ヨウコ歓迎こたつライブ」
11月11日(土)17:00~
ライブ1000円+食事1000円(酒と寝袋は持参。泊まる人は「宿泊希望」と明記)
住所:西東京市泉町6-9-13 コーポキャロット302(地図)電話042-421-9995。
西武池袋線保谷駅の改札を出て左へ。
階段下りると正面に居酒屋ポン太、右にパチンコ屋があり。
その間を通り、突き当りを右で道なりに15分。
中町交差点を右。(手前にコンビニアップルマートあり)
曲がると音楽教室が見え、そのアパートの3階。階段上って左です。
15人限定なので、お早めに予約メールください。嶋村俊光宛。
※トシは10日までみんなの鍋をつくるためキノコ狩り(幻覚キノコじゃないぞ!)にでかけてるので、メールの返信ができません。返事がなくても直接きてください。きた人はなにがなんでも全員いれますのでご安心めされ。