静岡ライブ | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

11月14日(水)
 突然オーストラリアから友人クロエとケイトがやってきた。
 ふうむ、「アポなし突撃隊」も世界規模になってきたもんだ。ふつう「アポなし突撃隊」は絶対禁止だが、クロエはオーストラリア・ケアンズでも居候させてもらった大親友である。
 ムール貝のホワイトソースのニョッキをつくり、日光の名所である幾何楽堂へ連れていってもてなした。
0711クロエ

11月15日(木)
 静岡ライブが決まったとき、真っ先にひらめいたのは神をも恐れぬ野望だった。
 お宝鑑定団全制覇!
 古着やおたくグッズを売っている鑑定団グループは栃木県に5軒、静岡に5軒ある。いわば静岡は「キングダムオブ鑑定団」といっていい。
 オレの唯一の趣味は古着を集めることである。趣味と言ってもステージ衣装なので、仕事でもある。ブランドには一切興味がないが、誰も着ないような、つまりオレにしか似合いそうもない変な服が好きなのだ。
 さっそくオレは検索の鬼と化し、富士鑑定団、清水鑑定団、静岡鑑定団、藤枝鑑定団、浜松鑑定団の住所と地図をプリントした。
 そうだ、清水にはニューヨーク時代の親友、クンちゃんがいる。彼は太平洋を単独横断した超人ヨットマンである。しかし25年も連絡とってないし、どうせつながらないと思いながらも電話した。
「もしもし、こちら日光のアキラともうしますが……」
「おおーっ、アーボーか! 毎日ブログ読んでるよー」
 というわけで、オレは1日早く静岡に行くことにした。鈍行でまずは吉原で降り、富士鑑定団を制覇。 清水で待ち合わせしたクンちゃんの車で、清水鑑定団、静岡鑑定団を制覇した。
 海がながめられるクンちゃんのアパートでいろんな話をした。
 長年ヨット教室を経営しているクンちゃんはいずれ、「完全無計器」で単独太平洋横断、世界一周をしたいという。現代ではカーナビや小学生でもGPS(Global Positioning System)をつかっている。GPSとは 衛星軌道上の約24個の人工衛星から発信される電波により、緯度・経度を測定するシステムだ。
 クンちゃんはGPSはもちろん無線さえもたずに、ハワイから日本へ帰ってきた経験がある。まったく情報のない海のうえで眠っていた野性が目覚めていくのがわかったという。太陽と星に導かれ、クンちゃんは無事帰国した。
 規模は小さいが、オレも星の航海師に導かれ、古着の海から数少ないお宝を発見したのだった。

11月16日(金)掛川「Village」ライブ
 クンちゃんと清水で別れ、まずは焼津からバスで藤枝鑑定団を制覇する。
 それにしても富士山は圧倒的だね。
 頂上の自販機も見えないし、山小屋も見えない。独断と偏見で言うと、富士山から商売を一掃し、神様に返すべきだと思う。
 本来先住民は山に登らず、その周りを巡礼するというのが、古代からの掟だ。

 掛川には一度きたことがある。
 今から32年まえの1975年、中学生のオレは吉田拓郎・かぐや姫のつま恋コンサートにいったのだ。5万人の観客のなか、オレにとっては大冒険だった。
 そこへ今度は48歳のプロミュージシャンとしてもどってくるとは、人生ってわかんないね。
 会場は掛川駅から車で7,8分いった山のなかにあるフェアトレードの雑貨屋さん「Village」だ。お寺のような門をくぐると大きな庭があり、古い日本家屋にはアジア雑貨屋や障害者施設の方たちがつくった天然酵母のおいしいパンが並んでいる。オーナーのチサトさんが暖かい笑顔で迎えてくれる。
 まず午後3時から「トラベルシェアリング(旅のお話会)」がはじまる。
0711掛川ビレッジ トラベル・シェアリングphotp by YOKO

今回の主催ハナとヒロはオーストラリアへ1年間ワーキングホリデイでいっていて、これからオーストラリアへいくという女の子やインドへ10回以上も通うインド舞踊の先生やプロのキックボクサーまで、さまざまな人たちが集まる。
0711掛川ビレッジ3photp by YOKO

1.ぼくの居場所
2.旅立ちの歌
3.Walking in the rain
4.ミタクオヤシン
5.だいじょうぶマイフレンド
6.祝福の歌

7.愛のカタチ
8.たったひとつの命
9.ばあちゃんの手
「アジアに落ちる」(朗読:AKIRA。ギター:ヒロ)
0711掛川ビレッジ2photp by YOKO

10.Life is beautiful
11.家族
12.絆
13.祈りの歌(アンコール)
0711掛川ビレッジ1photp by YOKO

 なごやかな雰囲気でライブは終わり、オーナーのチサトさんが声をかけてきた。
「いつも選曲はどのように選ぶんですか?」
「まあ、会場に入って、お客さんの雰囲気などを見てからなんとなくこんな感じかなって選びます」
「今日の後半の曲って?」
「あっ、そういえばなんか死者のメッセージみたいな曲ばっかになっちゃったね」
「……あたしの姉がおととい亡くなったんです」
「ええっ!」
「誰にもいわなかったんですが、昨日お葬式に出て、今日青森から帰ってきたんです」
「ふうむ、なんか今日ここへはいったとき、すんごくいい感じがしたんです。なにかに守られているような、安心感が満ちていて。そういうことだったのね」
「まるでアキラさんの曲がぜんぶ自分のために歌われているような気がして、涙が止まりませんでした。しかもアキラさんの口をとおして姉がわたしに語りかけていると確信しました」
 おおー、オレはイタコか!
 うーん、マニュアル棒読みで何万円も取る現代イタコより、2000円でアキラライブきたほうがお得だぞ。

 打ち上げはハナが借りておいたキャンプ場へいった。
 キックボクサーであり天体オタクのナルが満天の星空からホームズ彗星大バーストを探し出し、双眼鏡で見せてくれた。これほどのバースト(燃焼)は100年に一度も見られないとのこと。ガスのような白いもやが星をとりかこみ、うっとりするほど美しかった。
 オレたちはこれらの星からやってきて、また星に帰っていく。
 スターチャイルドなんだ。

11月17日(土)KAWASIMA houseライブ
 本日の主催者ゆっこ(HISATO)さんはすごいヒーラーである。
 オレも世界中のシャーマンに会ってきたので、そう直感する。いいヒーラーは、わたしが癒してやるとか言わず、本人のなかに眠っている力にゆだねることができる人だ。それに謙虚である、ユーモアがある、しかもウナギをおごってくれるのだ!
 100の真実を語る者より、美味しいものを食べさせてくれる人をオレは信じるぜ。
 ゆっこさんとやはりヒーラーのユカちゃんと明治5年からつづく中川屋へいった。うおおー、なんだなんだ、「うなぎとろろ茶漬け」(2500円)という必殺技があではないか。うなぎ茶漬けといえば名古屋の「ひつまぶし」だが、中川屋はさらにそれの上をいく。一杯目はうな丼で、二杯目はダシと薬味を入れてお茶漬けで、三杯目はとろろをかけて三度楽しめる九尾のうなぎ三変化殺法なのだ。
0711ウナギ

 庶民の口にはいらない浜名湖でとれる極上のうなぎを天竜川の清流にさらし、ただでさえとろけそうな身にさらにとろろで溶けていく美味は言えねえ、言えねえ、もう言えねえ。
 しかもそのあとは静岡最後の砦浜松鑑定団だー。これで静岡の鑑定団5軒をぜんぶ制覇し、この世に未練はない。思いっきりライブに打ち込めるというものだ。

 会場のKAWASIMA houseは、演劇会のドン川島さんの自宅であり、唐十郎さんの天井桟敷はじめ数々の劇団が滞在している。壁から天井まで演劇のポスターが貼りめぐらされ、川島さんとのツーショット写真にはテレビでおなじみの超有名な芸能人ばかりが顔を連ねている。アイヌの長老を思わせる白髭をたくわえた川島さんは、大らかな笑顔と子供のような無邪気さを兼ね備えているとてもチャーミングなおじいさんだ。
0711浜松川島ハウスphotp by YOKO

 ゆっこさんが新しい提案をした。
「ライブのまえにアキラさんの歌を1対1で聴くというヒーリングをやりたいのですが?」
 ううむ、ヒーラーの素質などまったくないオレだが、なんでも新しいチャレンジは拒まないことにしている。
 ひとり目はライブに何度も通ってくれるMちゃんである。Mちゃんもパニック障害やらいろいろな試練をくぐっているが笑顔の素敵な女性だ。
 頭を空っぽにして浮かんできた曲は「Beautiful」である。この曲は一見ラブソングに聞こえるが、「命という奇跡は、ただ在るだけで美しい」という自分自身を完全肯定する歌なのだ。

君がただ在るだけでいい
君のまま在るだけでいい
受けとるより与えること
愛されるより愛すること
You are so beautiful
You are so beautiful tonight
永遠は今 無限はここ
僕は 君を生きていくよ
You are so beautiful
You are so beautiful tonight
そよ風は君 揺れる森は僕
君は僕を吹きぬけてゆくよ
You are so beautiful

 Mちゃんは閉め忘れた水道のようにずっと涙を流していた。
 つぎもネアリカのワークショップ3回参加の常連のMちゃん(別人)である。思いっきり明るくてやさしい子なのに、なぜかオレは「いたいのいたいのとんでけ」を選んだ。

心の傷かくしてた
大人になっても
誰にも言えなかった
信じられなかった
もういいかい? 君に言うよ
ほんとは淋しかった
もういいかい? 君が好きだよ
ほんとは愛されたい
君と出会って気づいたんだ
なにかが解けたんだ
受け入れないことから
苦しみははじまる
わたしは産まれる前から
わたしであったということ
「すべて」であったということ
いたいのいたいのとんでけー
空の果てへとんでけー
魔法かけて 傷を消して 抱きしめて
いたいのいたいのとんでけー
地の果てへとんでけー
頭なぜて 涙ふいて 笑って

 オレにはわからないが、Mちゃんのなかではなにか釘のようなものがぬけた気がするという。
 それにしても1対1で歌うって、100人のまえで歌うより緊張するね。これもいい学びになった。
0711浜松川島ハウスphotp by YOKO

 さあ今日は、昨日とつづけてきてくれた人も多いので、かぶらない選曲をする。

1.今日は死ぬのにもってこいの日だ
2.愛を知らない子供たち
3.Be yourself
4.Born to love
5.100億光年の孤独
6.alone

7.ソウルメイト
8.Unconditional love
9.背中
10.Hello my mom!
11.家族
12.終わらないキスをしよう
13.天使のKiss(アンコール)

 主催のゆっこさんは音楽ページの試聴コーナーで「100億光年の孤独」を聴いて泣いたという。こんな壮大な歌で泣けるはずはないだろうと思っていたら、今日も泣いていた。昨夜のホームズ彗星大バーストみたいにスケールのでかい人なのだ。

ぼくらはどこから来て
どこへ帰ってゆくのだろう
夜空の星にきいても
答えはない
朝露に光る蜘蛛の巣
無限に膨張するコスモス
ひねもす考えても
答えはない
100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

ぼくらはなぜ出会って
なぜ別れていくんだろう
微笑む君にきいても
答えはない
冷めたカフェラテの紙コップ
捨てる君は携帯をハングアップ
これからどこへいこうか
答えはない
100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

あなたは誰ですか
そして僕は誰ですか
鏡に問いかけても
答えはない
毛先の反った歯ブラシ
気楽なひとり暮らし
「ただいま」とドア開けても
答えはない
100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

死んだらどうなんの
また生まれ変われんの
死人に口なし
答えはない
こんなぶさいくな毎日を
生きていてなんになるの
自分で見つけなきゃ
答えはない
100億光年の孤独
誰かそちらにいますか?
100億光年の孤独
僕はここにいるよ

応答せよ
応答せよ
応答せよ

 今日のライブも大成功で、はやくも来年の3月22日(土)、23日(日)の静岡ライブまで決まってしまった。ゆっこさんのフットワーク&ネットワーク恐るべし。
 なんと雑魚寝ではなくホテルオークラまでとってもらった。
 ほうーっ、浜名湖にはこんなに電気ウナギがいるのかあ。
 電気ウナギの大群じゃなくって、浜松の夜景だって。
 またもオレは素っ裸になって浜名湖のウナギたちに手じゃない、股間を振るのだった。
 ありがとーウナギさんと鑑定団、
 さよならー静岡の仲間たち。
 股くるよー、ぶるん、ぶるん!
0711浜松夜景