前橋「サンデールーム」ライブレポート | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

 昨日はどしゃ降りの雨の中を往復2時間以上も歩いてB4サイズの額を買いにいった。アヤワスカ・ドローイングの小作品をいれるためである。買ってくれた人は額がついてくるなんて知らないが、自腹を切っても旅立つ我が子に美しい花嫁衣装を着せたくなる親心なのよ。
 そんでもって今日「蝶の精」A1はもうすぐ子供が産まれる広島のちよへ、B4も広島のキミコさんへ、B2は小田原のヨシエさんへ、「ケツアルコアトルの精」は埼玉の蓮(レン)さんへ、「アヤワスカの精」は東京のアヤ&ララへ郵送しました。
 「蛇の精」C2はニューヨークのピアニスト・レマへわたる。「ケツアルコアトルの精」は来年2月にオープンする宮古島の宿に飾られるのでみんな見にいってね。たくさんに人からオッファーがあった「鹿の精」はミクシでシェア・アキラマニアを主催するピリカがゲットしたので、江古田にあるピリカ宅へヒーリング・マッサージを受けにいけば見られるよ。
 もう「ネネの精」と「ジャガーの精」しか残ってないけど、小作品も早い者勝ちですよー。

10月22日(日)
 群馬県前橋にある自然食レストラン「サンデールーム」は、古代米や玄米、美味しい野菜料理をランチに食べられる。ベジタリアンじゃなく、魚介の組み合わせも絶妙である。なによりオーナーのつきちゃんみっちゃん姉妹の人柄に惹かれておもしろい人たちが集まってくる文化の発信基地でもある。
 今回からはじめた日曜市にも、オーガニック野菜、手紡ぎの毛糸、ハンドメイド・オーダーメイドの服、フランス刺繍など、さまざまなジャンルの人たちが一堂に会している。
 おっ、いたいた、東照宮で結婚式を挙げたヒトシとフジコがインドカレー屋を出している。やつらは先々週くらいつきちゃんとうちで会ってるんだよね。
 おおー、ONSENS高崎ライブの写真を撮ってくれたコイタバシヒロユキも流木アクセサリーを売ってるではないの。ヒロユキは石垣島に流木アクセサリーの店を出し、ヨウコにも会ってるんだよね。
 二階のライブ会場に上がると星野貴子さんの絵が飾ってある。一枚の原画をまえにオレは立ちすくんだ。
0610星野貴子画星野貴子画
 絵に描かれた女性の乳房がオレがライブのたびに持ち歩いているヨウコの乳ガン写真とそっくりだった。
 仮借ない視線で生と死を見つめる女性の瞳にヨウコが重なる。
 今夜も石垣島にとどくよう歌ってやると腹をくくった。

 ONSENSの出発点となった2005年4月大蓮寺ライブ以来、1年半ぶりの前橋だ。相棒のタケちゃんがデザイナーとして多忙を極めるなか、どんどんソロ活動が活発になっている。
 はじめはひとりで演奏する自信がなかった。すばらしい才能でサポートしてくれるメンバーがいない。ましてやオレを音楽の道に導いてくれたタケちゃんがいないのは絶望的ハンデキャップだった。
 もしオレがしょぼい演奏をして「やっぱりAKIRAひとりじゃだめねえ」と言われたら、メンバーは悲しむだろう。逆にONSENSライブと同じ感動をソロで与えられたら祝福してくれる。
 ONSENSというのはそれほどすごいやつらなんだ。オレに音楽の厳しさと楽しさを教えてくれた4人の師である。
 やつらの名に恥じぬようオレは長岡、新潟、神戸、大阪、京都、広島、札幌、アイヌモシリ、東京、埼玉とたくさんのソロライブをつづけてきた。
 誰にもたよれない孤独が奔流のようにオレの歌を磨き上げる。
 サンデールーム、今夜のメニューは、東京と埼玉で封印してきた「alone 2」がついにベールを脱ぐ。

1、ぼくの居場所
2、fragile(alone 2)
3、だいじょうぶマイフレンド(alone 2)
4、青空のむこう(alone 2)
5、hallo my mom
6、背中
7、Brave Heart
8、存在の歌
9、Reincarnation
10、ベスト(alone 2)
11、祈りの歌(alone 2)

 2週間ほどまえヨウコに会ってきたつきちゃんは、なんと携帯電話でライブを石垣島へ中継した!
 ヨウコはオレのブログでさんざん「祈りの歌」を歌ったというライブレポートは読んでいるが、自分のために歌われる歌を聴くのははじめてである。
 オレは歌いだしたイントロをいったんやめ、白い額縁にはいったヨウコの乳ガン写真をみんなに見えるように立て直した。
0609ヨウコのガン
「このピンク色の部分は乳首ではありません。乳房の8割にまで広がったガンが皮膚を突き破ろうとしているんです」
 ヨウコは「乳房の80%まで広がったガンは削除できないので、抗ガン剤で小さくしてから摘出手術をおこないましょう」と医師に言われ、髪の毛がすべて抜け落ち、人格さえ崩壊させるような苦痛に耐えた。
 しかし数日前、残酷な精密検査がでる。
「ガンはもとのまま、しかも鎖骨のリンパへ転移しています」
 ヨウコのがんは第三期(ステージ3)と呼ばれる段階で、
 10年間生存できる確率は……
 たったの20%だ。

今夜君は淋しすぎるから
居場所を求め ぬくもり求め
街をさまよう
誰か気づいて わたしに気づいて
汚れた体 けがれたお金
呪いつづける

おお罪なる者よ
おお幸いなるかな
ぼくたちは見てる 君を見てる
すでに君は許されてる

さあとどけ 祈りの歌
君の胸へと突き刺され
さあひびけ 祈りの歌
慈悲の涙で地を満たせ

今夜君はやりきれないから
家中の窓を 拳で砕き
腕を切り刻む
誰か気づいて わたしに気づいて
血に染まるシーツ 身にしみる弱さ
憎みつづける

おお孤独なる者よ
おお幸いなるかな
ぼくたちはいるよ 君といるよ
すでに君は愛されてる

さあとどけ 祈りの歌
君の胸へと突き刺され
さあひびけ 祈りの歌
慈悲の涙で地を満たせ

 ヨウコのミクシ日記にはこんな文章が書かれていた。

私のがんがわかってから自分のライブがあるごとに「祈りの歌」を歌いながら私のことをみなにおねがいしますと言い続けてくれた人。
大阪のライブでその様子を見た人は、(ヨウコさんのことが)気になってしょうがないんだ、頭から離れないんだって様子で何回も話し、
みんなに「ヨウコのことをよろしくおねがいします」と頼んでいました、
「あいつがよくなるようにイメージしてやってください」と頼んでいましたと伝えてくれた。
そのリアル「祈りの歌」をきょうやっとはじめて聴いた、電話で中継してもらって。
この夏何回もライブに行きたいと思って航空運賃を調べたけど、とても行ける額じゃなかった。
1回でもAKIRAさんの歌を聴けば、1回でもAKIRAさんにがんを触ってもらえれば、ってずっと思っていたよ。
ずっとずっと聴きたかったんだよ。
それがきょうやっと聴けたんだよ~。
きっともうすぐ実際のがんにも触ってもらえると思う。
そうなったらがんはあっという間に治ると思うんだけど~~。

今夜君は終わらせたいから
致死量の薬 ヨーグルトに溶き
むりに流しこむ
誰か気づいて わたしに気づいて
うすれゆく意識 消えゆくサイレン
悔やみつづける

おお死に急ぐ者よ
おお幸いなるかな
ぼくたちは叫ぶ 君に叫ぶ
すでに君は生かされてる

さあとどけ 祈りの歌
君の胸へと突き刺され
さあひびけ 祈りの歌
慈悲の涙で地を満たせ

今夜君は苦しすぎるから
病院のベッド 点滴のバッグ
嗚咽噛み殺す
誰か気づいて わたしに気づいて
軽すぎる命 重すぎる運命
嘆きつづける

おお不幸なる者よ
おお幸いなるかな
ぼくたちは歌う 君に歌う
すでに君は守られてる

さあとどけ 祈りの歌
君の胸へと突き刺され
さあひびけ 祈りの歌
慈悲の涙で地を満たせ

 電話のむこうで、
 石垣島にひとりぼっちのヨウコは、
 号泣していた。
 しかしその涙は絶望の涙だけじゃない。

 こんなにたくさんの人が、
 こんなにちっぽけな自分を、
 こんなに想ってくれる。
 ひとりぼっちじゃない、
 すべてはつながっているんだ。

 ライブが終わり、車で日光に送ってくれるつきちゃんと、
 「ヨウコ奪還計画」を立てた。
 死神の手から、石垣島の孤独から、
 ヨウコを連れもどすぜ。
 この文章を読んでしまったみんな、
 覚悟はいいかい?
 ヨウコだけじゃない、
 この戦争は自分自身の存在にナイフを突きつけられている。
 君の「想いが形になる」か、
 ならないか?
 オレたちは神々に真っ向から勝負を挑む、
 「祈りのテロリスト」なんだ。
 人を殺すテロリストが、
 人を生かすテロリストに、
 今、君が祈った刹那、
 世界は反転する!