生きる連鎖のバトン | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

9月20日(土)新宿「ネイキッド・ロフト」
アイコ・セルフストーリー・オペラ「祝福の歌~それでも人生は素晴らしい~」
080920akiraphoto by KENTARO

朝、福岡の魂友たちに見送られて、東京行きの飛行機に乗る。
自分が成し遂げてきたことをゆっくりと味わう時間がないのはつらいが、つぎの土地で自分を待っている人々がいると思うと身が引き締まる。
離陸と同時に美しい思い出がイレースされていき、今日のステージへの臨戦態勢にはいる。
台風の過ぎ去った空を雲のうえからながめ、アイコから送られてきたオペラの脚本を開く。
通常オペラは、語り手が書いた原作をオレが脚本にする。もちろん曲も場面場面に合ったものをオリジナル150曲のなかからオレが選ぶ。
しかし今回は、天才詩人アイコだ。
脚本も曲のチョイスもアイコにすべてゆだねた。
脚本をめくりながら軽く手が震える。削り込まれたストーリー、鋭いガラスの破片のように煌く言葉たち、うねるようにラストを希望へと転化させていく力量、行間に満ちる慈悲。
これはとてつもない作品になる。
ひとりでうなずいたとき、ほほが濡れていたことに気づいた。
羽田からバスで新宿、タクシーで新大久保の「ネイキッド・ロフト」へ到着した。
今日の戦友ライブペインティングの清水君、やっちん、そしてアイコが満面の笑みで出迎えてくれる。数日前から台風で飛行機が飛ばないと予想されていただけに、みんなほっと胸を名でおろす。さあ、これで全員役者はそろった。

夜の会場には入りきれないほどの人がつめかけてきた。後ろでは立ち見の人たちがぎゅうぎゅうに肩を寄せ合っている。アイコとのコラボには若者たちが多い。ひきこもり、ニート、リスカ、OD、家族問題を抱える者も多い。
アイコ自身、さまざまな困難をくぐってきた。祖父や父からの家庭内暴力、機能不全家庭、リストカット、不登校など。アイコ自身、死を覚悟するほど苦しんできた。今夜それらをすべてさらけだす覚悟を決めたのだ。アイコ自身こう語っている。
「自分の現実を全て語ることは、とても難しかったです。
5年間こわれ者でライブをやらせてもらっていても、未だに前日は不安と届けたい想いが高ぶって眠れないのに、今回はその何倍もこわくて、いつもする舞台前のライブイメージが作れませんでした」(ミクシィ日記より抜粋)
本番直前にもアイコは震えていて、出演者4人が手をつないで力を循環させた。
「よし、いくかー。今夜はオレたちが台風になるぞ!」
ステージに上がり、清水君とやっちんが自らの体験を朗読し、オペラの幕は開ける。
080920aikophoto by KENTARO

オレはいきなり雷を落とし、会場が感電する。

おまえが生まれるとき
世界は笑い
おまえは泣く
おまえが死ぬとき
世界は泣き
おまえは笑う(AKIRA「今日は死ぬのにもってこいの日だ」)

1、 今日は死ぬのにもってこいの日だ
2、 愛を知らない子供たち
3、 宵闇(歌:アイコ)
4、 リストカッター
5、 祈りの歌
6、 Life is beautiful
7、 背中
8、 透明色(歌:アイコ)
9、 祝福の歌
10、 なんくるないさ(アンコール)

オレたちのうしろでは清水君とやっちんの絵が完成にむかって輝きはじめている。あふれる生命力が絵からあふれ、会場を歓喜の渦に巻き込む。
080920simizuphoto by KENTARO

アイコが社会的には誰にも話せないような負の経験を語りつくし、それが表現というパワーに変換されたとき、観客は魔法の瞬間を目撃する。

家族がわたしにくれたものは暴力と血にまみれた記憶と、もうひとつ。
10のうちの1に満たないかもしれない、
それでも多分あっただろうもの。
家族が、とてもとても、とても憎い家族がわたしに残してくれたもの、
それがわたしの名前。

そしてあなたの中にも必ずあるもの、
それをこう呼ぶんだ。
愛と。(aiko)

たとえ誰が君を馬鹿にしようとも
オレは胸をはり君を祝福するよ
たとえ君が君を見下そうとも
オレは腕ひろげ君を祝福するよ

Gods bless the child
だめなままでいい
Gods bless the child
弱いままでいい
オレはなにもあげられないから
さあ受けとっておくれ 祝福の歌(AKIRA「祝福の歌」)

アイコが自らの血を流しくぐってきた苦難が、とてつもない作品を生み出し、人々に生きる力を分け与えていく。
自分をまちがわせたとまったく同じ力が、自分を正しい道に連れもどし、さらなる高みに導いてくれる。
そう自分のネガティブを丸ごと受け入れたとき、人ははじめて本物のポジティブを手に入れることができるのだから。
雷鳴を束にしたような拍手が鳴り響き、観客は涙に濡れたほほを輝かせながら立ち上がる。
アンコールは思いっきりハッピーな「なんくるないさ」で踊り狂う。

島は島でもひとつじゃない
海の下では陸つづき
人は人でもひとりじゃない
赤い血潮で結ばれる

なんくるないさ なんくるないさ
なんくるないさ さっさっ
死なないていどに命がけ
オイ!!!!!!!!!!(AKIRA「なんくるないさ」)

狂喜乱舞のアンコールのあと、アイコが右手をすうっと観客のほうへ差し出した。
「わたしは、人と出会って、生きる連鎖をもらいました。
バトンタッチです。
今度は貴方から、生きる連鎖を広げていってください」
080920kinenphoto by KENTARO

※新大久保グルメ情報
「ネイキッドロフト」にむかって左へ5メートルくらいいくと、インド料理の「グレート・インディア」(03-5272-6336)がある。カレーの種類は豊富だし、ナンはばかでかいし、安いし、うまい。
080920curryphoto by KENTARO

「ネイキッドロフト」にむかって今度は右へ5メートルくらいいくと、韓国スーパー「南大門市場」がある。ここのテイクアウトメニューの「スンデ」(血ともち米のソーセージ)、トッポギ(もちのスープ)、韓国おでんはおすすめ。

※個展&オペラ月間がせまってきましたよー!
★10月3日(金)~27日(月)栃木県南宇都宮「ギャラリー悠日」にてヨーロッパ時代の油絵大回顧展
〒320-0838栃木県宇都宮市吉野1丁目7番10号(東武線南宇都宮駅より徒歩1分。地図
電話028-633-6285(10時~18時まで 毎週火曜定休)

★10月5日(日)AKIRA自伝オペラ「Traveling man」完全バージョン
語り部:AKIRA。歌い手:AKIRA
5時開場。6時開演
前売り2300円 当日2500円。
世界70カ国を放浪し、ニューヨークで麻薬の売人、ホームレス、泥棒にまで堕ちたAKIRAが波乱万丈の人生を自らオペラとして上演。

★10月11日(土)日光幾何学堂
「笑う障がい者」
講演:脳性まひブラザース
ゲスト:AKIRA
6時開場。6時半開演。2500円。(予約はいりません)

★10月12日(日)脳性まひブラザース・オペラ「だいじょうぶマイフレンド」
語り部:脳性まひブラザース(新潟)。歌い手:AKIRA
5時開場。6時開演
前売り2300円 当日2500円。
脳性まひという重い障がいを越えて、プロのお笑い芸人として活躍する脳性まひブラザースの涙と笑いに満ちた人生が胸を打つ。

★10月19日(日)やよい・オペラ「勇者の心臓 BRAVE HEART」
語り部:やよい(山形)。歌い手:AKIRA
5時開場。6時開演
前売り2300円 当日2500円。
日本を代表するファイアーダンサーとして活躍したやよいは、薬物自殺未遂によって全身の筋肉が溶け、車椅子生活を送る。虐待、旅、障がいを超え、命そのものの喜びを歌い上げる。

★10月25日(土)日光幾何学堂
「未来で待ち受けるアイヌの知恵」
講演:アシリ・レラ
ゲスト:AKIRA
6時開場。6時半開演。2500円。(予約はいりません)

★10月26日セルフストーリーオペラ「レラ」
語り部:アシリ・レラ(北海道)。歌い手:AKIRA
5時開場。6時開演
前売り2300円 当日2500円。
アイヌ民族を代表する語り部として祖先の知恵を伝えるアシリ・レラさんは、たくさんの身寄りのない子供たちを育て、自然を守る活動をつづけ、アイヌモシリ一万年祭を15年にわたって主催する。世界中の先住民と交流を広げていく。深い英知と大いなるやさしさに満ちたレラさんの人生に触れる貴重な機会をお見逃しなく!
悠日でのライブ・前売り電話予約:028-633-6285(10時~18時まで 毎週火曜定休)
公演当日に受付にて、「チケット前売りの予約を入れました●●●です。」とお伝え頂ければ、前売りの金額で入場できます。