オペラ「たったひとつの家族」 | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

7月27日(日)オペラ「たったひとつの家族」
中禅寺湖のスイカ割りから南宇都宮に直行し、ギャラリー悠日にはいる。
夜6時半から写真家ダイ(鈴木洋見)のセルフストーリー・オペラだ。
7月13日日光幾何楽堂でおこなったオペラが大好評だったので、宇都宮での再演を決定した。
とくにこの悠日はギャラリーとしてもコンサートホールとしても最高のつくりだ。東京をはじめ日本全国をまわっているがこれほどのスペースと音響を備えた場所はほかにない。
080727kaijou1.jpgphoto by MIYUKI

1メートル以上に引き伸ばされたダイの巨大写真は恐ろしい迫力で迫ってくる。しかし彼の写真には奥深い温かみがあり、人間の最も美しい部分に守られているような心地よさがある。
高い天井と大谷石の壁はさながら原始キリスト教の教会を思わせた。
080727kaijou2.jpgphoto by MIYUKI

オレたちは迷った。
ノーマイクでもかなり響く会場だが、ダイの朗読が聞こえるのか? 観客がはいったとき、音が吸われるのではないか?
まずは音響機材をセッティングして、リハをおこなう。マイクとノーマイクで音の響きや言葉の鮮明さを聴き比べる。たしかにアンプを通した音は大きくなるが、繊細な音のニュアンスは消えてしまう。
どうする?
観客を惹きつける作品ができれば、音が小さくても人は乗り出してくる。逆にいい作品をつくりあげられなければ、観客には言葉も音も伝わらない。
オレたちはひとつの賭けにでた。
観客全員が耳をそばだてるくらいすばらしい作品を見せてやろうと。
オレたちには確信があった。
本番直前まで脚本を直し、言葉の精度を高めていくダイ、しかも壁にはダイが魂をこめて撮った写真が守護天使のように見守ってくれる。
オレの歌にもノリちゃんの美しいピアノがサポートしてくれる。連日のライブにもかかわらず声は絶好調だ。
前回のオペラは前7曲の1時間バージョンだったが、今回はさらにダイが脚本を書き足し、3曲が追加された完全バージョンへと進化を遂げた。
ストーリーは前回の幾何楽堂で書いたブログを見てほしい。ダイの生い立ち、父との葛藤、日本ランキング5位にまで上りつめたキックボクサー時代、壮絶な世界放浪、両親に宣告されたガン、家族の和解、一人の男の人生が生々しいほどの迫力で語られる。

1、 Hello my mom!
2、 愛を知らない子供たち
3、 Traveling man
4、 祝福の歌
5、 Alone
6、 パズル(世界放浪のスライド)
7、 Life is beautiful
8、 背中
9、 祈りの歌
10、 家族(家族沖縄旅行のスライド)
080727okinawa.jpgphoto by MIYUKI

ダイの語りは演劇性を増し、言葉の緩急をあやつり、声がかすれるほど力で訴えてくる。とちゅうでキックボクシングのシャドウがちょっとはいったとき、「うわっ、こいつは野獣だ!」と思った。今までこんな怖い人と遊んでいたんだ。カニを取り合ったとき、逆らわないでよかった(笑)。
さあ原始人も負けずに吠える。
080727akira.jpgphoto by MIYUKI

声が吸い込まれるどころか、歌っているオレもびっくりするほど伸びやかで張りのあるボーカルが響く。ノリちゃんのピアノも2日間のライブとリハを経てまるで10年来のコンビではないかと思わせるほど息が合う。
080727nori.jpgphoto by MIYUKI

後ろで流されるダイのスライドと、映像+音楽+文学がトリオロジー(三位一体)となったステージに、観客は没入し、嗚咽し、感動のクライマックスへと上りつめていく。
ラストの「家族」ではオカリナの瀬戸ちゃんがはいり、さらに精度を高めた音色で盛り上げてくれる。
ダイはまっさらな灰になった。
一人の男の人生が多くの人たちの心を動かしたのだ。涙目の観客たちが祝福の拍手を贈ってくれる。これほどの感動と達成感はキックでチャンピオンになっても味わえなかっただろう。

※ダイの個展は明日30日までです。ぜひお見逃しなく。
ギャラリー悠日:栃木県宇都宮市吉野1丁目7番10号(東武線東宇都宮駅徒歩1分)
【電話・FAX】028-633-6285(10時~18時まで)